これから数回にわたって、ボクのジャズの歴史を振り返ってみようと思います.
 それはもう、何十年も前のこと、平塚に出てきて数ヶ月後、尋ねてきた友人とたまたま飲みに入った店が、その後の僕の運命を変えちゃいました.




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 裏通りの、住宅街の片隅にあったそのお店、入り口はさらに少し奥にあって、初めての人は必ず躊躇してしまうような雰囲気が漂っていました.
 ドアを通してかすかに流れてくるジャズ ・・・・・・・ ところがドアを開けた瞬間、そのかすかな音が何十倍かの音の洪水となって襲ってきます.
 おまけに、中はほとんど真っ暗、昼間にでも入ろうものなら、しばらく入り口で目を慣らさないと、カウンターの人影さえも区別できないんだな.

 細長い店内はカウンターが 10 席弱、あとは空いているスペースにとってつけたようなボックス席.カウンターには数人座って、ほとんどが目を閉じてジャズを聴いているし、マスターと思しき人物は、眼光鋭く、アフロヘアに、顎ヒゲ.
 正直 「こりゃ、すごいところに入っちゃったなー」 って感じでした.

 真空管アンプから増幅されたフレーズが JBL のカスタム・メイド (その後 JBL4343 に更新) のスピーカーから叩きつけるように溢れてきます.
 とにかく圧倒されたの一言でした.
 でも、なぜか居心地がいいんだな、ジャズなんてまったくわからなかったけれど、この音に中にいても不快感がなかったような気がします.
 だからこそ、のめり込んでいったんでしょうね ・・・・・・・・・ もうひとつの原因は女性だったのですが (笑) .




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 初めて入った夜にかかった一枚が、 "Concierto / Jim Hall" です.
 このアルバムはイージーリスニング的にも聴くことができるので、ジャズを深く聴かない人でも、割合と聴いているようです.

 ボクがモダン・ジャズに傾倒し始めた頃には、 「こんなのジャズじゃねー」 という感じでほとんど聴かなかったのですが、最近たまに聞いてみると、このジャズ屋の雰囲気や、その頃の常連お顔などが浮かんできて、ちょっとセンチメンタルになってしまいます.
 人間年を取ると涙もろくなるんだな.