エルスケン

JAZZ 1955-1959・61

  ・ ・ ・ ・ ・ ・



 ここ最近、前から探していた写真集などが、オークションで見かけるようになり何冊か条件に合ったものをゲットしています.
 前回書いた "The Sixties by KISHIN" はちょっと高額でしたが、それでも他で見た金額よりははるかに安かったので全然納得.
 普通に 20,000 円とか付けてますから.


 今日届いた写真集も、オリジナル版はとても買えそうもないので日本語版を探していたら、運よく発見できました.



elsken 001
 ● Ed. van der Elsken ●

 そう、今回はエルスケンの写真集 "foto Jazz" の日本版です.
 ネットやオークションでは 10,000 円超えるようなものも出回っていますが、なんと 2,000 円以下で購入できました.
 本当にこんな値段でいいの、思ってしまいました.
 安すぎて無事に届くのか心配でしたが、ちゃんとした出品者だったので大感謝.

 多少古書独特の匂いがあるものの、ヤケなどないところがグッドです.


 今回日本語版を探していたのは、オリジナルに手が届かないという意味もありますが、もう一つの訳がありました.
 それは 油井正一 氏の文が掲載されているからです.
 掲載と言っても、ほんの 2 ページ程度 (作品メモの囲みコメントは 藤本雄三 氏と書いてあります) ですが、間違いなくこの写真集を作るにあたっては エルスケン といろいろ話しながら作ったはずなので、オリジナルとは違う写真集と言ってもいいんじゃないだろうか.



IMG_0618



 "JAZZ 1955-1959・61 / Ed. van der Elsken"

  発行日 1988 年 12 月 24 日
  発 行 リブロポート
   文  油井正一



 この写真集は エルスケン の "foto jazz" の日本版ですが、掲載写真や構成はオリジナルと若干違っています.
 ネットで紹介されている写真の中には、本書にないものもあります.


 それを裏付けるように、巻末に書かれている作品メモの中に

 「1988 年 5 月 14 日、日本版ジャズ・ブックのため写真を鞄に詰めて東京にやってきた。ホテルの部屋でジャパン・タイムズを開くと、前日、 チェット・ベーカー (1929.12.23 〜 1988.5.13) が アムステルダム のホテルの窓から飛び降りて亡くなった記事があった。」
 とありました.



IMG_0631


 元々 エルスケン はジャズに興味がなかったようですが、 1955 年 9 月 17 日友人に誘われて コンセルトヘボー (一般的には コンセルトヘボウ と言うようですが、写真集の表記が コンセルトヘボー だったので) で Chet Baker を聴き、一発でその魅力にハマってしまいました.
 その時が初めてのジャズ撮影、それから 1959 年までジャズシーンを撮り続けました.

 コンセルトヘボー と言えば、世界三大オーケストラの一つ ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団 の本拠地でもあります.

 コンセルトヘボウ を直訳するとコンサートホール.
 イメージはクラシックという感じですが、実際にはジャズはもちろんロックなどのコンサートも行われ、過去には Pink Floyd もここでコンサートを開催しています.



IMG_0630


 写真集はソフトカバーで 200 ページ、 190 枚の写真が収められています.
 現在のように高感度なフィルムや高性能カメラなどない時代ですから、かなりざらついた感じの写真もあります.

 エルスケン の序文にも書いてある通り、この写真集のほとんどの写真がフラッシュなしで撮られています.
 それは、彼の写真家としてのこだわりが 「あるがままの光」 だったから.
 そのため露出不足気味のコンサート写真を、現像の押し(露出が不足しているフィルムを、現像液に通常よりも長く浸したり、濃度を上げたりして現像することで、画像の濃度を補い、階調を引き出す技法を指すこと) で作品に仕上げていたようです.

 当然粗い画像になってしまいますが、そのあたりは全然問題にはしていなかったようですね.


 「セーヌ左岸の恋」 では、暗い場所で顔だけが浮き上がっている写真がかなりありましたが、ストロボ使っていないとなると、やっぱり光の捉え方が上手いなぁ.



IMG_0619


 上の写真は 油井正一 氏が絶賛したもの.
 1956 年、"Birdland All Srars" のツアーでの一場面、 Lester Young と Miles Davis が共演しています.
 そのバックは、なんと Modern Jazz Quartet (MJQ) というんだから、すごい.
 ボクの乏しい知識だと、 Lester Young と Miles Davis が同じステージに立っていたこと自体が、ちょっと信じられないんですが.

 一体どんな曲をどんなふうに演奏したんだろうな.
  Lester Young を見る Miles Davis の笑顔が何ともいいじゃないですか.


 気になったので少し調べてみたら、ツアーのブートレグが何枚か市場に出ています.
 当時ラジオ放送された音源をリマスターしたものもありました.



IMG_0621


 写真はステージ上のミュージシャンだけではなく、観客の姿もかなり収められています.
 場所が コンセルトヘボー ということもあったか、ほとんどの方がネクタイで、女性はドレス.
 上の写真のようなイブニンググローブも、あの時代や場所柄なんでしょうね.

 ちなみに写真の彼女は、 Sonny Rollins と Horace Silver のサインを手袋にしてもらってご満悦.

 このツアーに限らず、この当時のミュージシャンたちはしっかり正装で演奏しています.
 小さなライブハウスなどの写真観ても同様.


 こういう環境でジャズの演奏ができ、どこに行っても温かく迎えられるんだから、多くのミュージシャンがヨーロッパへ行ったのも理解できますね.

 当然ギャラもかなりよかったようです.



IMG_0627


 こういったヨーロッパでのジャズ人気もあって、映画にもジャズが積極的に使われるようになったのもこの時代.
 多くの作品でジャズが使われるようになりました.
 日本では シネ・ジャズ 何て呼ばれたりしてますが、 1957 年に公開された ロジェ・ヴァディム 監督による "大運河 (Sait-on Jamais) " で MJQ が音楽を担当したのが最初と言われています.

 この頃、特にフランス映画ではジャズ使われている作品が多い.
 一番有名と言ってもいいのが " 死刑台のエレベーター (Ascenseur pour l'echafaud) " .
 改めて言うまでもなく Miles Davis .

 " 危険な関係 (Les Liaisons Dangereuses:1959) " 、 " 殺られる (Des Femmes Disparaissent :1959) " 等は有名なところ.
 ボクは " 墓に唾をかけろ (J'irai cracher sur vos tombes:1959) " の "褐色のブルース" がとても好きだったりします.

 もう少し後になりますが、 " ブリット (Bullitt:1968) " での Lalo Schifrin の演奏は映画の良さも相まって、ボクの中でのシネ・ジャズの最高傑作と思ってます.



IMG_0625


 この写真集眺めていると、ジャズのいろいろなフレーズが聞こえてくるようです.

 まぁ古き良き時代のジャズという感ではありますが・・・・Chet Baker が聴きたくなりますね.



  ・ ・ ・ ・ ・ ・

セーヌ左岸の恋

  ・ ・ ・ ・ ・ ・



 今回は、久しぶりにジャズのアルバムではなく写真のお話.
 今年になって最初の写真集購入です.



IMG_734102


 "EEN LIEFDESGESCHIEDENIS IN SAINT-GERMAN-DES-PARIS" .
 直訳すると「パリ・サンジェルマンのラブ・ストーリー」.
 日本 では 「セーヌ左岸の恋」 (Love on the Left Bank) というタイトルの有名な写真集です.


 撮影したのは エド・ファン・デア・エルスケン (Ed van der Elsken) .
 アン (Vali Myers) という一人の女性画家を中心に、当時の若者たちの生き様をストーリー仕立てに仕上げた写真集になっています.


 以前から探していましたが、本の状態や金額の関係でなかなかいいものがなくて、ようやくって感じ.
 ネットで古本を探すことはできますが、きちんとしたショップもある反面よくわからないようなお店もあったりするので、掲載されている本の状態も、正直届くまでわからない.
 たまに痛い目にあったりすると、心がガッツリ折れちゃうんですよねぇ.


 今回購入したお店は "flotsam books" という、ファッション、アート、写真集等のアートブック買取と販売、洋書新刊販売のウェブショップです.
 販売している写真集をいろいろ見てみると、価格もかなり良心的なものが多い気がします.
 梱包もしっかり丁寧にしてあり、これからは要チェックのお店になりました.



elsken 001
 ● Ed van der Elsken の エルスケン立ち ●

 エルスケン はオランダの写真家.
 1925 年 3 月 10 日生まれで、 1990 年 12 月 28 日癌のため 65歳で亡くなっています.
 1950 年から 1954 年までパリで暮らし、その時に撮り溜めた写真からこの写真集ができています.
 彼が影響を受けたのは Henri Cartier-Bresson で、パリ時代には彼の妻 Ata Kando が マグナム・フォト で働いていたので、ひょっとすると会ったこともあるんじゃないのかな.


 上の写真はとても有名で、二眼レフ持っている人だったら一度はこのポーズでセルフィー撮っているとも言われてます.


 同世代の Robert Frank や William Klein らとならんで、ストリート・スナップの巨匠的な、この当時を代表する写真家の一人です.


 下の写真も、Walker Evans ではなく Klein の "New York" だったらいいんですが、あの写真集はとてもじゃないけれど高額すぎて手が出ません.
 それと Klein の写真は、どうも今一つ好きになれなくて写真集は一冊も持っていません.
 写真から伝わってくる、ちょっと暴力的なエネルギーみたいなものはすごいとは思うんですが、かなり食わず嫌いな感じもありますね.



IMG_7329


 この写真集は 1950 年代を代表する写真集の一冊で、日本語版や英語版など発売されていますが、今回購入したものは オランダ の Ludion という出版社から 2015 年に発売されたものです.

 この出版社の名前は初めて耳にしたので、ちょっと調べてみたらオランダでは有名な出版社みたいです.
 規模的には小規模な出版社で年間の発行は数えるほどですが、とても良質な写真集を作っているようです.


 当然ですが、すべてオランダ語なので「ちょっと何言ってるのかわからないですね」という サンドウィッチマン 状態.
 英語だったらなんとなくのニュアンスが読み取れますが、さすがにオランダ語はねぇ.

 でも新品 (今回はここがとても大事) で価格もまぁ納得の値段だったので、写真観るには充分かと.


 表紙カバーの上にビニールのカバーがかけてあり、ページを開く前からとても丁寧な印象を受けます.
 新品ならではの開いた時のインクの匂いとかがやっぱりいいな.
 写真部表面のちょっとザラっとした感じも大好きです.



IMG_7330


 コントラストが強いモノクロ写真で、黒い部分は潰れているような感じ.
 ただ、粒子が粗くざらついたような感じではないですね.

 日本を代表するストリートスナッパー 森山大道 氏の若い頃の写真はアレ・ボケ・ブレという表現され、独特な画像でとてもインパクトがあります.
 森山氏の写真もかなりハイコントラストなものがありますが、 エルスケン とは全然印象が違いますね.
 使っていたカメラの違いも大きいのかもしれません.


 エルスケン の写真は、あえてアンダーにしたのか、レンズの限界だったのかはわかりませんが、顔はライトが当たっているかのように明るく撮っている写真が多いです.
 暗闇に顔が浮かび上がっているような.

 とてもインパクトありますね.


 このあたりは完全なストリート・スナップという感じではなく、ある程度光や影を計算してスナップっぽく撮ったのかもしれませんが、今になってはよくわからないでしょう.




IMG_7331


 撮影されたのは第二次世界大戦から約 10 年後.

 自由奔放に生きる若者たちの姿を、 アン という女性を中心に撮ってあります.
 爽やかに希望に溢れる若さなんかは全くない感じですね.
 表情がどこか退廃的な雰囲気で、刹那的.
 かと言って、 Klein のようにぎらついた感じでカウンター・カルチャーといった雰囲気でもなく、どこを見ているのかわからないような視線の写真が多い.
 
 目標を見失っている若者たちという感じです.
 なにか、今の日本のトー横キッズのような雰囲気もあります.


 決して豊かな時代ではありませんが、 Robert Frank のような貧困さが漂っているわけでもない.
 Robert Frank は豊かな国アメリカの光と影みたいな写真だったからなぁ.

 これが Walker Evans まで遡ると、完全に 「怒りの葡萄」 になっちゃいます.



IMG_7332


 この写真集の中には、ヒロインでもある Vali Myers の描いた絵がかなり入っています.
 そして、ところどころに詩的な文章が入り、普通の写真集とは一線を隔てています.
 写真と共に一つのストーリーに仕上げてあるので、本当は日本語訳がある方が絶対にいいと思います.


 一応ジャズ・ファンを名乗っているので、 エルスケン の "Foto-Jazz" はどうしても押さえておきたいところですが、これまたなかなかいいものがない.
 とにかく高すぎます.

 中古相場で 50,000 円くらいしてますので、さすがにこの写真集にこの金額は出せないな.
 ましてや実物を手に取らずネットでの購入なので、これだけ高額なものはリスクが多すぎます.



IMG_7333


 今朝は雨です.
 今週末はどうも天気が悪そう.

 来週リビングのエアコン交換するので、その前にいろいろやっておくことがあるんだけど、雨で捗りそうもないな.

 とりあえずジャズでも流しながら写真集ゆっくり観ようかな.



  ・ ・ ・ ・ ・ ・
● プロフィール ●

la_belle_epoque

 ジャズ・アルバムの紹介を中心に始めたブログでしたので、こんなタイトル付けていますが、最近では完全に写真やカメラの話題が中心になっています.

 最近になって 沼 という場所にハマっていることに気が付き、脱出のためもがき苦しんでいます。
 金銭感覚も社会通念上の常識とはどんどん離れていってるようですが・・・・・・

 いつもおいでいただく皆様に、感謝です。

● 記事検索 ●
● PV Access ●
  • 累計:

● お願い ●
•このブログに掲載されている写真・画像・イラストを無断で使用することはしないでください. コメントはすぐに反映されない場合がありますのでご承知ください.
  • ライブドアブログ