時の流れや、社会の変化で、今まで平気で使っていた言葉などが、いつの間にか使えなくなってしまうことが多々あります.
 映画の中のセリフや、歌の歌詞 ・・・・・・ さらにはアルバム・タイトルまで.




 このアルバムも、国内で発売当時は "鬱" というタイトルでしたが、現在は原題表示になっています.
 ボクの大好きな Pink Floyd のアルバムですが、素直に Pink Floyd とは言えないアルバムでもあります.






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  " A Momentary Lapse of Reason "  (旧邦題 : 鬱)





  1. 生命の動向 : Signs Of Life
     (Gilmour-Ezrin) ・・・・ 4:24
  2. 幻の翼 : Learning To Fly
     (Gilmour-Moore-Ezrin-Carin) ・・・・ 4:53
  3. 戦争の犬たち : The Dogs Of War
     (Gilmour-Moore) ・・・・ 6:05
  4. 理性喪失 : One Slip
     (Gilmour-Manzanera) ・・・・ 5:10
  5. 現実との差異 : On The Turning Away
     (Gilmour-Moore) ・・・・ 5:42
  6. 空虚なスクリーン / 輪転 : Yet Another Movie/Round And Around
     (Gilmour-Leonard) ・・・・ 7:28
  7. A New Machine Part 1 
     (Gilmour) ・・・・ 1:46
  8. 末梢神経の凍結 : Terminal Frost
     (Gilmour) ・・・・ 6:17
  9. A New Machine Part 2  
     (Gilmour) ・・・・ 0:38
  10. 時のない世界 : Sorrow
     (Gilmour) ・・・・ 8:46





  
  Pink Floyd : David Gilmour (g.vo.key.sequencers),
          Nick Mason (ds.perc.drum machine.sound effects)

  Additional musicians :
   Richard Wright (key.vo), Bob Ezrin (key.perc.sequencers),
   Tony Levin (b.Chapman Stick), Jim Keltner (ds.perc),
   Steve Forman (perc), Jon Carin (key), Tom Scott (as.ss),
   Scott Page (ts), Carmine Appice (ds), Patrick Leonard (synth),
   Bill Payne (Hammond organ), Michael Landau (g),
   John Helliwell (saxophone),
   Darlene Koldenhoven, Carmen Twillie, Phyllis St. James,
   Donnie Gerrard (backing vocals)






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 ジャケットの左側に貼ってあるのは、 2011 年リマスター盤が発売になった時に貼られたシールです.
 オリジナルのジャケットは、こんなシールはなく、写真だけです.
 このジャケット・デザインは、あの ヒプノシス ・・・・・・ 正確に言うと、元 ヒプノシス の ストーム・ソ−ガソン なのですが、まぁ ヒプノシス・デザイン でもいいでしょう.
 "アニマルズ" 以来の、ヒプノシス・デザインですが、やっぱり Pink Floyd はこうでなくっちゃ ・・・・・
 砂浜に並ぶ何百というベッド、 CG じゃないというのですから、驚き.
 こういったジャケットと、彼らの音楽性が、何とも言えない不安感を煽ってくれます.


 ・・・・・・ でも、このアルバムって Pink Floyd なの ??


 前作 "ファイナル・カット" を最後に、 ロジャー・ウォーターズ は Pink Floyd を去り、 リチャード・ライト もバンド活動からは遠ざかっていました.
 デヴィッド・ギルモア と ニック・メイソン の二人だけが、 Pink Floyd という名にしがみついていた感じですね.
 さらには、 Pink Floyd の名前を使用することに関して ロジャー・ウォーターズ から訴訟が起きていた時期でもあり、正にアルバム・タイトルのような頭の痛くなるような時期でもありました.
 結果的にはこの訴訟に関しては和解が成立し、このアルバムも Pink Floyd 名義で発表されました.
 後年、 ロジャー・ウォーターズ が行っていた "The Wall Tour 02" の "Comfotably Numb" の演奏にサプライズとして デヴィッド・ギルモア が参加したりしてましたから、とりあえず仲も良くなったのでしょうかね.



 そんなアルバムですので、きっと一部のファンからは、 「こんなアルバムは Pink Floyd じゃない」 とも言われているでしょうね.
 ボクは ・・・・・・ このアルバムも Pink Floyd ! 、という立場です (笑) .



David_Gilmour
     David Gilmour


 Pink Floyd は、ともすると ロジャー・ウォーターズ のコンセプトが前面に押し出された彼のグループというような見方をされます.
 コンセプトはともかく、 Pink Floyd のサウンドの重要な部分は デヴィッド・ギルモア だとボクは思っています.
 彼の奏でるギターの旋律こそが、 Pink Floyd だと.

 そう考えると、このアルバムも Pink Floyd .



 発表当時は ロジャー・ウォーターズ に 「非常に精巧に作られた Pink Floyd の贋作」 と酷評されたのですが、一般大衆には結構好感をもたれたようです.
 
 前作をもって Pink Floyd の活動が終わったと思っていたファンにとっては、まさに青天の霹靂だったのかもしれません.







Nick_Mason_2
    Nick Mason


 原題の意味は "一瞬の理性喪失" ・・・・・・ ボクにピッタリ.
 過去に幾度となく、これで失敗を繰り返してきましたから ・・・・・・ (笑) .

 アルバム・タイトルも曲名も、何か哲学的な響きがあり、初めてこんなアルバムを目にするとちょっと引いてしまいそうですが、聴いてみるとなんのことはないはずです.
 メロディに小難しいところはありません.
 とかく プログレッシブ と呼ばれるものは、複雑難解な歌詞やタイトルが多いのも一部のみなさんから敬遠される所以でしょう.


 まぁ普通のロック・アルバムです.
 Led Zeppelin の独特なグルーブ感よりも、はるかに聴きやすいんではないでしょうか.
 慣れないと、ブルース・フィーリングに溢れる Zepp のグルーブのほうが、とてつもなくキツイでしょうから.

 
  このアルバムでは、女声コーラスや木管楽器などがとてもうまく使われており、演奏に独特の広がりがあります.

 静寂からシンセサイザーの幻想的な調べ、そこにあのギターが ・・・・・・ 一曲目の "Signs Of Life" がかかっただけでも、間違いなく Pink Floyd なのです.
 目の前には、何とも言えないサイケデリックで、どこか神経質で、そして哀愁の漂う未知の世界が広がっていきます.


 やっぱり Pink Floyd ・・・・・・・・ 最高です.