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 いきなり、ちょっと哲学的なブログ・タイトルですが ・・・・・・・

 "良い写真とは? 撮る人が心に刻む 108 のことば" という本が家にあります.
 著者は写真家の ハービー・山口 氏.

 となると写真集か、と思うのが一般的ですがどうもそうじゃない.
 ハービー氏がその時々思いついてツイッターにアップした 108 つの短文を、写真とともに綴っている短文エッセイ集とでも呼べばいいのでしょうか.



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 発刊されたのは 2017 年ですが、たしか 3 年前に購入しました.

 ボクは Peter Lingbergh 、 Richard Avedon , Hermut Newton 等の大判写真集を何冊か持ってますが、間違いなく一番目にしているもののは、このハービー氏の本です.
 実はこの本、トイレの入り口付近の手すりの上に置いて、トイレに行くときは必ず持って入ってはパラパラ.
 当然同じ文章を何度も目にしてますし、写真も何度も観ていますが、なぜか新鮮さが色褪せません.


 大判の写真集は写真を観るにはとてもステキなのですが、いかんせん観るには 「よし、観てやろう」 という心の準備が必要です ・・・・・ 特に "SUMO" や "Dior/Lindbergh" などは (笑)

 でもハービー氏のこの本は、とにかくこのコンパクトさがいい.
 そして、何度同じ写真を観ても、同じ文を読んでも、何か新しいものを見るような感覚があります.
 そんな不思議な魅力のある本です.



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 そんな本の中には何枚か見開き写真が入っていますが、唯一フレームをつけず全面で掲載されているのが上の "The 100 Club" でのスナップです.

 巻末の解説を読んでみると、空いている客席にステージの照明が入った瞬間を Leica M4 35mm 、 1/15 のスローシャッター撮影したとあります.


 全体が黒い中で浮かび上がるようなスキンヘッドの青年とその彼女と思われる女性.
 テーブルにはグラスが一つ ・・・・ に見えますがちょうど重なっているようにも見えます.
 その後ろにはまさにパンクというような四人組.
 でもなぜか古典的絵画のような静寂感があります.


 構図はもちろん、光と影もとても印象的な一枚です.
 この写真大好き、これ欲しいです (笑)



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 ● from dailymail.co.uk : Sex Pistols 1976 ●

 ボクがこの写真観た時にすぐに飛び込んできたのは、スキンヘッドの青年ではなく、壁面のポスター.
 Jazz という単語があったり、 Bechet Legacy があったり、真ん中にはでクラリネットを吹くシルエット ・・・・・・・

 ここって、ロンドンはオックスフォード 100 番地だよね.
 パンクの聖地だよね.
 違和感ありありじゃないですか (笑)


 クラリネット吹いているのは Monty Sunshine というクラリネット奏者.
 と言ってもボクも初めて聞く名前です.

 You Tube に演奏の映像があったので観てみましたが、コテコテのデキシーランド・ジャズ.
 ますますこのクラブに似合わないなぁ、笑っちゃうくらい.

 パンクのライブハウスだったら、壁は落書きや破れかけたポスターが雑然と張られ、室内はたばこの煙が漂っているているという雰囲気を連想しますが、何かこの写真にはそういった雰囲気が感じ取れず、すごくスタイリッシュでクールな写真になっているのがとても面白い.

 おまけにモダン・ジャズではなくて、メチャクチャクラシックなデキシーランド・ジャズ.



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 ● Monty Sunshine (cl) ●

 さらに左右のスケジュールに書かれている "Bob Wilber's Bechet Legacy"
 これがさ、また更にマニアック.

 まず Bob Wilber ですが、 Monty と同じリード奏者で、メインはクラリネットのようです.
 残念ながらボクはこの方の名前も初めて聞きました.

 そして Bechet というのは 1930・40 年代とても人気のあったクラリネット奏者 Sidney Bechet のことです.
 さて、ここからちょっと Blue Note レコードのお話し.



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 ● Sidney Bechet (ss) ●

 Blue Note を設立した アルフレッド・ライオン は、 1938 年 カーネギー・ホール で開かれた "From Spirituals To Swing" を観てレコード会社を設立することを決意したようですが、そのステージにも立っていたのが シドニー・ベシュ.

 その後 Blue Note レコードを立ち上げ、最初のヒット作となったのが シドニー・ベシュ の演奏した "Summertime" でした.

 この "Summertime" については面白い逸話が残っているので、ジャズに興味がある人は是非調べてみてください、そんなに難しくなく検索できると思います.



 こんな感じで、一枚の写真からいろいろ違う世界と繋がっていくって、映画の "ターミナル" みたいですね.

 そういえば your EOS. キャンペーンの時の 立木義浩 氏のアトリエに飾ってあった "A Great Day in Harlem" の写真も、立木氏のお話以上に集中力が写真に向いてました (笑)

 写真の力は偉大です.



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 さて、話を戻しましょう.
 ボクは一度だけハービー氏にお会いしたことがあります.

 2018 年 10 月 7 日、 昭和記念公園 で開催された ヨドバシカメラモデル撮影会 の会場です.
 もうすごく昔のように感じちゃいますが、あの時の暑さや人の多さは忘れないな.

 あの時は日差しがかなり強くて、途中からモノクロに変えて撮影、午前中の最後にハービー氏のところで撮った記憶があります.
 どんな説明してたかはもう忘れちゃいましたが、モデルにかなり大胆なポーズを要求していたことは覚えてます.
 パンクです (笑)


 ヨドバシフォトコン にはその写真は応募しませんでしたが、他の作品でなんとか入賞.
 あの時の撮影会がモノクロに芽生えた時だった気がします.


 この本をこの時に知っていたら、もっともっとハービー氏に貼りついていろいろ聞いていたかもしれません.
 今になればちょっと残念ですが、まぁ人生こんなもんです (笑)


 今日もトイレの中でパラパラとページをめくり、写真を眺めたりやエッセイを読んでは、ひとり頷いているのでした.



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 ● 2018.10.7 Canon EOS 5D Mark lV + SIGMA 105mm F1.4 DG HSM (BOKEH MASTER) ●



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