日差しは暖かいのですが、まだまだ風は冷たいですね.
 陽のあたるリビングはいいのですが、ボクの部屋はちょっと肌寒い感じです.



 以前からどうしても観たかった日本映画.


 決して今が光り輝いていない訳ではありませんが ・・・・・・・
 日本映画がまだまだ元気があった頃に作られた大作です.
 製作者の意思で、いままで VHS や DVD 発売されなかった映画です.

 家でこの映画を観ることは不可能だと思っていたのですが、昨年末 Blu-ray 発売計画のニュースが流れました.
 その時は他の作品数本と一緒の Box 発売だけのようなことが書かれていたので、正直購入は諦めていました.

 数日前に何気なく Amazon でこの映画の単品 Blue-ray を発見.
 いつの間にか発売になっていたんですね ・・・・・・
 Box と同時に単品発売もありましたので、即 Click !!!!


 内容なんてまったく確認しなかったので、特典 DVD 付きの "特別版" を Click してしまいました.
 その後、下に書かれていたレビューを読むと、この特典 DVD がたった 9 分だけのものでかなり辛口評価が多いため、すぐにキャンセルし "通常版" を再購入しました.
 キャンセルできるか微妙でしたが、かろうじてセーフでした (笑) .






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  " 黒部の太陽 "





  監督 : 熊井啓
  製作 : 三船敏郎、石原裕次郎
  企画 : 中井景
  原作 : 木本正次 「黒部の太陽」
  脚本 : 井手雅人、熊井啓
  音楽 : 黛敏郎
  撮影 : 金宇満司
  美術 : 平川透徹、山崎正夫、小林正義
  照明 : 平田光治
  録音 : 安田哲男、紅谷愃一
  編集 : 丹治睦夫
  出演 : 三船敏郎 - 北川 (黒四建設事務所 次長)
       石原裕次郎 - 岩岡 (第三工区 熊谷組岩岡班)
       樫山文枝 - 由紀 (北川の長女)
       日色ともゑ - 牧子 (北川の次女)
       川口晶 - 君子 (北川の三女)
       高峰三枝子 - 加代 (北川の妻)
       宇野重吉 - 森 (第四工区佐藤工業社員)
       北林谷栄 - きく (森の妻)
       加藤武 - 国木田 (第一工区間組 所長代理)
       辰巳柳太郎 -  源三 (岩岡の父)
       二谷英明 - 小田切 (第四工区佐藤工業 工事課長)
       佐野周二 - 平田 (関西電力 黒四建設事務所 所長)
       滝沢修 - 太田垣 (関西電力 社長)
       志村喬 - 芦原 (関西電力 常務取締役)
       柳永二郎 - 藤村 (第三工区熊谷組 専務)
       芦田伸介 - 黒崎 (黒四建設事務所 建設部部長)
       岡田英次 - 吉野 (黒四建設事務所 次長)
       信欣三 - 武本 (黒四建設事務所 次長)
       鈴木瑞穂 - 千田 (黒四建設事務所 技師)
       玉川伊佐男 - 佐山 (岩岡班 幹部)
       下川辰平 - 安部 (岩岡班 幹部)
       高津住男 - 大野 (第一工区間組 工事課長)
       大滝秀治 - 上条 (第一工区間組 班長)
       山内明 - 塚本 (第三工区熊谷組 工事課長)
       清水将夫 - 田山 (地質学者)
  ナレーター : 平光淳之助
  配給 : 日活
  公開 : 1968 年 2 月 17 日 (東宝系ロードショー)
        1968 年 3 月 1 日 (日活系全国封切)
  上映時間 : 196 分






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 こちらのポスターには 「黒四ダム 建設七年の苦闘を再現する」 と書かれていますね.

 ボクも以前は誤解していたのですが、この映画は 黒四ダム (現在は 黒部ダム が一般的な名称) 建設を描いたものではありません.
 黒部ダム を作るための機材や重機などを運ぶためのトンネル建設工事を描いています.
 原作では 黒部ダム 建設のことも書かれているのかもしれませんが、ボクは原作を読んでいないのでこの部分はとてもグレーです.
 少なくてもこの映画では、トンネル建設工事だけが描かれます.



 以前からどうしても観たかった映画ですから、久しぶりに期待感ありありで観てみました.
 昨年の秋、近くの映画館で二回だけ上映されたのですが、どうしても都合がつかず涙.
 
 上映時間がとても長い (196 分で途中休憩あり) 映画ですが、映画がよくできているせいか思ったほど長くは感じません.
 一見スペクタクル的要素が強そうですが、どちらかというと人間ドラマという感じでしょう.
 でも、ダラダラしたドラマではなく、適度な重厚さがいいですね.
 過酷なトンネル工事の場面や、時折映し出されて四季の風景



 主演は 三船敏郎 と 石原裕次郎 という、当時の日本を代表する二人.
 いろいろな障害を乗り越えて作った映画だけあって、非常に見応えのある作品です.
 主演の二人の周りを固める俳優たちも、今では大御所と呼ばれるような俳優さんたちがゴロゴロ.




黒部の太陽 1001

 この頃の日本映画って、物凄く元気があったように思います.
 もちろんリアルタイムで観た訳ではなく、時々過去の有名作品を観ているんですけれど.
 決して今の日本映画がよくない訳ではないのでしょうが、過去の名作と呼ばれる作品は、どうも今の有名作品よりもいろいろな意味でスゴイものが多い気がしています.


 この映画は 1968 年 キネマ旬報 ベストテン の第 4 位でした.
 ちなみにトップ 3 は、
  第 1 位 "神々の深き欲望" (監督:今村昌平)
  第 2 位 "肉弾" (監督:岡本喜八)
  第 3 位 "絞死刑" (監督:大島渚)

 かなり社会派の作品ばかりですね.


 日本映画に限らず、社会的な問題やディープな深い人間ドラマを題材にした、ちょっと小難しい映画がよしとされた時代があったように思います.
 重くなければダメ ・・・・・・・ 単純にアクションや恋愛を扱った娯楽作品はちょっとレベルが低いような感じで.




黒部の太陽1005

 まぁ、これはジャズ喫茶の世界でもおんなじで、俗に言うシリアスなジャズこそがジャズで、フュージョンなんてジャズじゃない ・・・・・・ というような理論がまかり通っていた時代があったのですから.
 ジャズも映画も今になればそんなこと、どうでもいいって感じです.
 観たり、聴いたりして楽しいひと時が過ごせればいいんじゃないの ・・・・・ 最近は歳と共に丸くなりすぎて、ただただどこまでも坂道を転がり落ちていっているような気がします (笑) .



 まぁそんなボクの映画観は置いておいて ・・・・・・・
 やっぱり 三船敏郎 の存在感はスゴイものがありますね.
 あの目力はもちろんですが、身体で繊細な感情の表現などするところが、本当にうまい.
 困難な仕事と、家族の問題の板挟みになる一人の男の姿をうまく演じています.
 うう〜〜ん、非常に共感できちゃいますなぁ.

 最後の場面、電報を握りしめながら作業員たちに挨拶をする場面は ・・・・・・ ウルウルです.




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 石原裕次郎 もいいのですが、それ以上の存在感が 辰巳柳太郎 .
 一昔も二昔も前の職人という感じで、もう無茶苦茶です.
 昔はこんな感じの頑固オヤジがいたのにねぇ. 


 この映画にも出てきますが、 黒部ダム 建設と同様の難工事が 黒部川第三発電所 仙人谷ダム 建設資材運搬用のトンネル建設工事のお話し.
 これは 吉村昭 の長編小説 "高熱隧道" で描かれています.
 この工事も超過酷で凄惨を極めた工事だったようです.





 折角だから、昨年 立山 縦走に行った時途中で撮った写真をアップしましょう.
 立山黒部アルペンルート の途中で何度もこのダムを歩いていますが、こういった映画を観た後だと、今まで見てきた景色とちょっと違って見えてきます.




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 扇沢駅 から 関電トロリーバス で 黒部ダム駅 、降りて小さなトンネルを抜けてダムに出ます.
 登山者など先を急ぐ人たちはこのトンネルを通りますが、別の階段で展望台へ行くこともでき、観光客の多くはそちらの展望台からダムを見下ろしながらダムに行くというのが一般的かもしれません.

 トロリーバスはこの映画のトンネルを通り、車内ではこのトンネル工事やダム建設のことなどが音声ガイドされます.
 途中、破砕帯の部分は青いランプの表示がされていました.




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 トンネルを抜けるとこんな景色が見えます.
 緑色のダム湖 黒部湖 ・・・・・・・ ダム湖一周の遊覧船もあります.
 ダム堰堤の上を徒歩で 黒部ダム駅 と 黒部湖駅 を行き来します.


 映画の中で、 「俺たちがどうしても入れなかった冬の黒部に、サンダル履きで安直な連中が気軽に出入りするってわけだ ・・・・・・ 」 と 岩岡 が言っていましたが、まさにその通り.
 すでにこの 黒四ダム は一大観光スポットになっています.

 岩岡の言うように、これがいいのか悪いのかは別にして、気軽にこういった大自然や人が作った驚くような建造物を見ることができるのは、決して悪いことではないでしょう.

 おかげでボクも、簡単に 立山 まで行けてしまうのですから.




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 立山ロープウェイ から見た 黒部湖 .
 こんな感じで全体を見てみると、改めてその大きさがわかります.




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 観光シーズン中行われる放水 ・・・・・・ 平和的ですねぇ.



 映画では ダム本体工事が描かれていないと言ったにもかかわらず、最後はダムの写真ばかりでした (笑) .